柏崎の方言

2021年2月21日

柏崎

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「久しぶりだのう、おめさん。忘れてっかも知んねども、柏崎弁で喋りまくってみようねかて!」で始まる4ページほどの資料が自宅にあります。新潟・柏崎の両親からもらった「柏崎弁」に関する記述なのですが、詳細は不明。村田さんという筆者が、田中心一氏の著書「消えゆく方言」を引用して書いたものらしいのですが、大変参考になるので勝手に紹介させていただきます。(^^;


(2017年5月に柏崎で撮影)

◇     ◇     ◇

※以下、資料の引用です。


久しぶりだのう、おめさん。忘れてっかも知んねども、柏崎弁で喋りまくってみようねかて!

故田中心一先生の名著「消えゆく方言」の中から、こんなのあったなあという言葉を勝手に拾い出してみました。あんまり上品でないものが多いようですが、そんな言葉のほうが懐かしい感じがします。今の子どもに、果たしてどれだけ通じるのでしょうか。(村田)

あいさ

あいだ(間)のこと。

――戸のあいさに落ちていた――

あいぶ(ええぶ)

あるくの意。あゆむ→あいむ→あいぶ

――おうい、皆があいぶてやー――

――そんがにおらええばんねえて――

あたける

子供達がさわいでじっとしていないこと。

あっきゃ

この辺だけの感動詞。余り上品な言葉ではないがよく使われる。女の人の「あら、嫌だ」に当たるようだ。男も「しまった」というような時に使っている。

――あっきゃ、おらどうしようば――

あっぱ(――あっぱんじょ――)

どんな字引にも出ていません。この辺の人はすぐ汚いと思うでしょうが、東京の人はうんこなんかよりさっぱりしていて感じがいいとほめた人もいます。あっぱんじょは便所のこと。

あめる

頭が禿げること。これもこの辺だけらしい。

いっこく

頑固なこと。

――あの衆はいっこくだすけなあ――

いっせき

すべて、みんなの意。

――いっせきお前さんのおかげですて――

おっぽしょる

折ること。

――鉛筆の芯がおっぽしょれた――

おめる

叱ること。

――とっつあんにおめられるど――

かがっぽい

まぶしいこと。

――かがっぽてよう見えねえ――

かつける

人のせいにすること。古語のかづくからきている言葉で、辞典にはかづけると出ている。

がせいがない

骨を惜しまず働くことを江戸時代に我精という。それがないという意らしい。体力とか根気がなくなること。

――俺もこの頃がせいがなうなってのう――

かたねる

肩に担ぐこと。

――この石をかたねられっか?――

がめでかし

頭のおできをとがめと言い、それをでかしているひとのこと。

がめる

そっと盗みとること。どこでも使っている言葉だと思ったら、どの辞典にもでていなかった。

――おい、小屋へ行って薪二、三本、がめて来い!――

ぐちら

と共にとか、ひっくるめての意。ごと。

――おら、りんごなんか皮ぐちら食うで――

けつかる

おり、居り等の人の所作を卑しめて言う江戸時代の言葉だけれど、この辺では今でもよく使っている。ただし教養のある人は使わない言葉。

――何してけつかるこんでや、まだ来ねえ――

げっぽん

一番あとのこと。いわゆるびりである。

――げっぽんでも賞品くれてるてや――

けなりい(けなるい)

羨ましいこと。どちらも狂言などに出てくる古語だが、この辺ではそのまま今でも使っている。

――そんげけなりがんなや――

ごうめん

ご免を延ばした語。この辺の子供の挨拶の言葉で、「今日は」「さようなら」両方にアクセントを変えるだけで使い分けた。

「今日は」の方は、ごおめんとおだけを高く発音し、さよならの時はごーめんとめんの方を少々あげていうのである。

こて(こてや)(接尾語)

行くわよのわよか、まあいいさのさに当たる語。これがつくと言葉に一寸優しさが加わるような感じがする。

――ほんにそだこて、そだこてや――

――お前さんがそんげしねたていいこてや――

ごどう

くどいこと。くどくどと同じようなことを繰り返して言うこと。

――いつまでもごどういうな――

さあさ

しまった、とか残念という時に使う。

――さあさ、おら、また本を忘れてきた――

ざいご

正しくはざいごう(在郷)である。いなかのこと。略したざいも古くからの言葉。

さべっちょ(しゃべっちょ)

おしゃべりのこと。ついでにお断りしておくと、しゃをさ、しゅをすと発音することは平安時代からの古い言い方。

さんじょっぱらい

後始末を全然しないようなことを言う。

昔、三条の商人の支払いが悪かったので生まれた言葉だ、などと聞いたことがある。

――あの子はまあ、また、部屋中さんじょっぱらいにして出かけやがった――

しっぺた

しりべたの音便。しりべたは尻の肉多き部分を言うと辞典には書いてある。

ついでにいうと、ぺたはほっぺた、向こうペた、川っぺたという風に、端とか辺を表すこの辺だけの接尾語である。

しなな

尻穴の約った言葉と思うけど如何?

しゃぐ(しゃぎつける、しゃいつける)

ピシャピシャ叩くこと。漁師は浪が舟ばたをしゃぐとも言うとか。これに強めの接尾語のつけるをつけてしゃぎつけるとも言う。そしてこれがまた音便でしゃいつけるに変わる。

――あんま、馬鹿ばっかこくとしゃいつけるど――

じゃみる

駄々をこねること。

――また、あの子はじゃみてるのか。放っとけ放っとけ――

じょんのび

仕事をはなれて楽々とレジャーを楽しむことを言うようだ。寿延びから来ている言葉と思うのだけど...

――おら今日はじょんのびに来たがんだすけ、ゆっくらさして貰いますて――

しょうしい

恥ずかしいこと。笑止(笑うべこと)に、いをつけて形容詞にしたものらしい。

――ちーとばかりでおしょうしだども持ってきましたて――という風な使い方もある。

――男の中に女はおら一人なんだんが、しようしてしょうして、どうしょうもなかった――

しょったれ

不潔なこと。また、その人間を言う。

潮垂れるから来た言葉ではないかと思う。

――あんがしょったれのこさえたもんなんか、なんして食われようば――

じょんぎ

どうも仁義らしい。人の道、挨拶の意。

――おまえさんの方から先に行くのがじょんぎだこて――

じょんならん

非常に沢山のことを言う。余り多くて自由にならんの意か?

――今年は柿がじょんならんほどなったすけ、もぎに来いやー

しんならづよい

しなしなして、弱そうでねばり強いこと。

古語にしんなり強しはある。

すてっぺん

てっぺんに接頭語のすがついたもの。

頂上のことである。

ずる

東京に行って、使って一番笑われる言葉の一つ。滑り行くとか、いざり動く意味で、ちゃんと、どの辞典にも出ているのだし、この辺の人の使い方は正しいのだから威張っていいはずなのだが、よその人は、みな動くで間に合わせて使わないため、この辺だけの方言になってしまった語。

――ああ、やっと汽車がずりはじめた――

――すみませんけども、もうちょっとそっちの方へずってくんなせえ――

ずれっこない

これも説明困難なことば。エッチがかった冗談好きという様な意味があるとおもうけど如何?

――あの人はずれっこないことばっか言うて笑わせるでなあ――

そかす/そける

共に失敗すること。

――またそかして書き直すのか――

――今朝はすっかり寝そけてしまった――

だいおろし

使い初めの意。

――この道具はだいおろしだでや。もっと大事にしねけばだめだねっか――

たいしょ

子供に対してほめたり励ましたりする時に使う。大将とおだてる意か?

――お前また家の手伝いか?たいしょだなあ――

だすけ

すけは標準語のからに当たるから、だすけはだからである。

――このいちごはおらちのがんだすけ、いくらもいでもいいでや――

だーすけさ

前記の語に接尾語のさをつけただけだが、相手の意見を重んじた、実に感じのいい語で、私の大好きな言葉である。最近よく使われている「そういうことです」にぴったり当てはまる語。

たつけない

たわいもないこと。

――そんげたつけねえ話ばっかしていんなや――

たよさん

神主さんのこと。

たよはたいふ(太夫とかき、たゆうと読む)の訛で、昔、神官のこともこう呼んだ。それに尊敬のさんをつけたもの。

たらかす

うまいことを言ってだますこと。古語のたぶらかす、たらすと同語で、膝栗毛などに出てくる古語をこの辺では今でも使っている例。

――あれはこっすいすけ、たらかされんなや――

たれこちる

どの辞典にもでていない、この辺だけの語。今にも垂れそうで、どうにもならぬ状態を言う。

――早う出れいや、おらたれこちでいるがんだで――

ちゃか

はげのこと。柏崎市内では、ぱちゃと言っていた。

ちょべ

小生意気で出しゃばることで、若い者だけに使う語のようだ。

――なあは、ちとちょべだぞ。気をつけろ――

ちょうらもうらする

まごまごすること。語源は全然わからない。

――ほんにおら、ちょうらもうらしてしもうたて――

つらはらす

不機嫌でふくれっ面をすること。いつもそういう顔をする人のことをつらっぱらしと言う。

――あの子は何してあんげ面はらしているだや――

でこ

元来、物のいかめしく大きいことを言う副詞であるが、この辺では大げさにとか、余りにの意に使っている。

――でこ、叱らん方がいいでや、ぐれると悪いすけ――

てしょ

手塩皿の皿を略した語。小さく浅い皿のこと。

普通やさしくおてしょと言う場合が多い。

てもずら

手でするいたずらのこと。てもずらはすると言わないでかくという。

――そんげてもずらばっかかいてねえで、ちと勉強せえ――

とぶ

飛ぶで、どの辞典にも早く走ることという意味も書いてあるのだが、東京へ行って、走る意味で使うと笑われることは確実。この辺ではつい最近?まで、走りっくらのことを飛び競争と言っていた。

――早うとんでいって煙草買うてこい――

なあ

二人称。あなたとかお前の意。古事記の肇の部分にある「なが身はいかになりませる...」のな(汝)をこの辺では今でも使っている訳である。ただし、発音は、なあと少し音を延ばし、あのアクセントを上げて言う。昔は尊敬の意味のある良い言葉だったのだが、今ではお前(これも昔は良い言葉だったはず)ぐらいの意に使われている。

――なあまた、どこへいっていたや。みんなが探していたど――

なじ(なじょ)

どんなの意。

――とっつあん、身体が悪いってねか。なじでえ――

なっちゃも(なっちょも)

前記のなじょうもと同じ意味の語で、どうぞの意。

――なっちゃもそうしてくんなせえ。おら文句はありませんすけて――

なんぎい

難儀にいをつけて形容詞にした、この辺独特の言葉。つらいとか苦しい意。

――こんげなんぎい仕事、いつまでさせる気だ――

ねまる

ねまり地蔵のねまるである。すわること。

もう一つ、中浜辺では、お産で寝ることもねまると言う。

――お前さん、そう、ヘえじっきねまらんけばならんだすけ、しめしなんかの支度ようしときなせえや――

ねら

なら(汝等)の訛と思う。普通はお前らと複数の意味だが、単にお前の意味にも使う。

――ねら、そこで何してるがんだや――

――ねらちのとっつあん元気だかや?――

のうか

尚更の意。

――おら、留守番している方が、のうかいいがんに――

のめし(のめしこき)

怠けること。または怠け者という。

――そんげのめしばっかしるもんじゃねえこて――

はつめい

利口とか、かしこい意味で、江戸時代によく使われている語だが、この辺では今でも年寄りの間に残っている。

――お前さんどこの子はなかなかはつめいだすけ楽しみだこて――

ばらこくたい

ばらばらに物が散らかっていること。

――なんだ、こんげばらこくたいにしてて...足の踏み場もねえねか――

びびら

熊手のこと。この辺だけの言葉らしい。

べと

土のことだが、どうも泥っぽいのを言うような気がする。古語だろうと思って色々調べてみたけど、どの辞典にも出ていない語。

――マンション住まいをしていると、たまにははだしでべとを踏みたくなるなあ――

ぼっちょ

うまく説明できない言葉、ものの上についている小さな円い様なもの、とでも言ったらいいだろうか。正ちゃん帽の先の円い玉とか、急須のふたのつまみみたいなもの。

ぼぼける

もののまわりがもやもやとしてハッキリしないことを言う。

――老眼になったこんでやら、物がぼぼけて、見えて駄目だいや――

まっか

まくわ瓜の訛り。

――このまっかようよんでるでゃ――

まんまえる

弁償すること。どういうところから出た言葉か、色々調べてみたがわからない。

――なあがこわしたんだねか。まんめえて返せ――

みよける

孵化(ふか)すること。卵がかえってひよこになること。

めっこめし

出来損ないのしんのあるご飯のこと。

――お前が焚くとまためっこめしにするからだめだ――

もうぞう

漢字で書けば妄想なのだろうが、この辺では、特にわけのわからぬ子供っぽい考え、または、そういう子供を指して言う言葉のようである。

――そんげいつまでも、もうぞうばっか言うてて、どうする気だ――

もうてなし

何をやってもうまくやれない人間、つまり不器用者を言う。

――あんげもうてなしに何が出来ようば――

もんこうじさん

ふるちんのこと。

私が村の小学校にあがった頃には、猿股(今の若い人にはわからないかも知れない)をはかない子供が何人かいた。

――あいつはもんこうじさんだいや。ヤーイヤーイ――

この語について、私は、昔柏崎の聞光寺の方丈さんの中に、ふんどしするのを嫌いな人がいたのでこんな語が生まれたと想像しているのですが、どなたかご存じありませんか。

――や

普通なら、感動の終助詞の「よ」というべきところを、この辺では「や」という。

――早う来いや――

やったねかそう

一語ではないのだが、この辺ではよく使う言葉である。やったではないか、それの意

――さっき、なあにやったねかそう。よう探してみれや――

やめる

病めるが当たる語と思うけど、意味は痛いことである。

――へそのごま取ったら腹がやめてやめてどうしょもなかった――

わさこき

いたずらばかりする子。

――あの子わさこきで困るよ――


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