塩の潮解と除湿剤の話

2020年7月19日

科学

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なんとも不思議な現象を目撃しました。小皿に入れた塩がじっとり湿って、何やら液体が流れ出しています。

もちろん、水をかけたわけではありません。このところの長雨の影響で、塩が湿気を吸ったのでしょう。それにしても、液体になるなんて…。

不思議に思い、ネットで調べてみると、これは固体が湿気を吸って溶解する「潮解(ちょうかい)」という現象だと分かりました。

塩の結晶表面には、わずかな飽和水溶液があり、そこに空気中の水分が取り込まれて濃度が下がると、結晶を徐々に溶かしていくというわけです。

ところが、この潮解という現象、食塩の主成分である塩化ナトリウム(NaCl)では起きにくく、食塩に含まれる“にがり”成分、塩化マグネシウム(MgCl2)で起きやすいのだとか。

そう聞いて、合点がいきました。実はこの塩、「赤穂の天塩」という“にがり”入りの塩だったのです。実験で比較したわけではありませんが、おそらく一般的な食塩よりも潮解が起きやすいのだと思います。




(原料は天日塩と“にがり”)

面白いと思ったのは、この潮解という現象が「除湿剤」の原理にも使われていること。除湿剤の白い粉は塩化カルシウム(塩カル、CaCl2)で、塩化マグネシウムと同様、潮解が起きやすいのだそうです。

つまり、小皿の上で起きていた謎の液化現象は、除湿剤のメカニズムとほとんど同じということです。まあ、これで除湿しようとは思いませんが…。

そして、除湿剤を使った後にできる液体は「水」ではなく、塩カルの水溶液であることも分かりました。つまり、地面に捨ててしまうと塩害になるってことかな…。

盛り塩でも起きる

ネットを調べていて思ったのですが、この話、ほとんど「盛り塩」の文脈で語られています。つまり「厄払いのために盛り塩をした」⇒「しばらくしたら、塩がびちょびちょに濡れた」⇒「もしや悪霊か何かが憑いているのでは?」といった文脈です。

盛り塩をしている古風な方々、胸を張りましょう!(笑)これは悪霊とは何の関係もありません。塩に含まれる“にがり”と、空気中の湿度が関係しているごく普通の現象で、「除湿剤」と同じメカニズムなのです。


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