この前、都市農業公園で知り合いの80歳過ぎのおじいさんと話をしました。かつて「川あるきの日」で一緒だった人です。たまに農業公園で会います。
このおじいさんは15歳から働きに出た苦労人です。当時は日曜日しか休みがなく、「第5日曜日や祭日は出勤だったから月に4日しか休めなかった」と話していました。土曜日の午後が休みになる「半ドン」という制度は役所などにはあったそうですが、「自分たちにはなかった」と言っていました。
労働環境は悪かったようです。この人は新聞や雑誌に掲載する写真フィルム(ポジフィルム)の現像を手掛けていました。暗室で現像をした後、明るいライトテーブルで目視による検査を行うため、明暗差が激しく、目に負担がかかります。それで「この前、目の手術をした」と言っていました。
労働時間も長いです。裁判や選挙などの結果を印刷物に載せる場合、予定稿を何パターンか作っておいて、発表と同時に差し替えることがあります。今はパソコン上で作業ができますが、当時は印刷の版を全部作っておいて交換しました。だから印刷関係の仕事はいつも終電ギリギリだったそうです。
(2017年2月に参加した「川あるきの日」から)
こういう話を聞くと、現代の労働環境はずいぶん改善されたのだと思います。多くの企業は週休2日ですし、新型コロナで在宅勤務をしている人も多いです。写真もデジタルだから、パソコンやスマホで簡単に処理できます。
その一方で「技術の進歩が速くて付いていけない」とも話していました。趣味でデジカメの撮影をしていますが、家庭用プリンターで印刷した写真は、フィルムを化学処理して得られる色とはまったく違っていて、いまだに「写真」という感じがしないのだそうです。効率化を進めると、いろいろと失うものもあるのでしょう。
「最近はアルツハイマーになりかけたが、なんとか乗り切った」とのこと(笑)。ボケを防ぐためには、頭に太陽の光を当てることがいいと聞いたから、こうして河川敷を歩いているのだと話していました。
昔の記憶が消えてしまうのは、実に惜しいことです。川あるきメンバーの人たちは、荒川の記憶を後世に残す「荒川の昔を残す会」という活動をしていると聞きました。そこで記録が残るものもあるのでしょうが、埋もれたまま消えていく話もたくさんあるのでしょう。
実家の両親は70代後半に差し掛かっています。本来なら元気なうちに、いろいろ話を聞いておくべきなのでしょうが、私は東京に出てきたので、あまり話をする機会がありません。新型コロナでリモートワークが可能な現在、必ずしも東京にいる必要性はありませんが、それでも今では東京がすっかり故郷なので、ここを離れる気にはなれないのです…。これまで通り、LINEなどの便利なツールを使いながら、会話の機会を増やしていくのがいいのでしょうね。(^^;
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